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声優落語天狗連

アニメ『昭和元禄落語心中』のテレビ放映に合わせた「アニメ×落語×声優」の異色コラボイベント。その名も「声優落語天狗連」。年100本近くのアニメイベントMCを務め、落語研究会出身のニッポン放送アナウンサー・吉田尚記と、同じくアニメ好きにして落語研究会出身、イベント「渋谷らくご」をプロデュースする学者芸人・サンキュータツオのダブルMCで展開中の「声優落語天狗連 Supported by 昭和元禄落語心中」の魅力をお届けします!

【声優落語天狗連 第五回 レポート】 落語は“人”

先週7月23日(土)に浅草東洋館で開催された、イベント「声優落語天狗連 Supported by 昭和元禄落語心中 第五回」のイベントレポートをお届けします!

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5回目の開催となる「声優落語天狗連」。このイベントは、声優が“初めての落語”に挑戦したり、落語ファンのサンキュータツオさんやニッポン放送吉田尚記アナウンサーがフリートークをしたりと、落語初心者でも楽しめるプログラムが多く用意されていて、誰でも参加しやすいイベントなんです。

来場者の中には若い女性がたくさんで、五回目を迎えリピーターもどんどん増えている。ちなみに、「浅草東洋館」は、漫才・漫談などを中心とした演芸場で、建物を同じくする姉妹館・浅草演芸ホール(落語中心の寄席)とともに歴史ある浅草お笑い文化を担う存在。かつてストリップ劇場として営業されていたことや、ビートたけしさんが芸人としての第一歩を踏み出した劇場としても知られている。大正ロマンな雰囲気があって、純喫茶やレトロを愛する女子なら心くすぐられる素敵な建物でした。

◆MC2人の「落語愛にあふれたフリートーク」!

そして開演。まずは、落語研究会出身のニッポン放送吉田尚記アナウンサーと、アニメ好きにして落語研究会出身の学者芸人・サンキュータツオさんのダブルMCによる「アニメ×落語談義」からスタート。

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サンキュータツオさんの話」で特に印象的だったのは「なぜ落語には四季があるのか」という話。「例えば“芝浜”を落語家がやり始めたら“あ、冬になったんだな”って客は思いますよね。1年経つと、人間ってなんとなく内容を忘れてるんですよ。落語は“なんとなくあらすじを覚えてる”状態が一番楽しめるものなんです。」

2人のトークは表向き「前座」と自分たちで言っていたが、実際は、後で演じられる落語をより面白く聴くための贅沢な解説でした。

◆声優・福島潤さんの「声優落語チャレンジ」!

普段はアニメキャラクターにセリフを吹き込んでいる声優さんが、1人きりで複数の役をこなす落語に挑戦する目玉企画「声優落語チャレンジ」。

これまで声優の石井マークさん、阿座上洋平さん、古川慎さんが「初めての落語」に挑戦してきたこの企画に、今回挑戦した声優は、『弱虫ペダル』の鳴子章吉 役や、『アクエリオンEVOL』のジン・ムソウ役などで知られる人気声優 福島潤さん。

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披露したのは「反対俥」という、人力車で浅草から上野まで走る道中のドタバタを描いた15分ほどの演目だった。この日のために、真打・立川志ら乃師匠から1ヶ月みっちり稽古をつけてもらったそうです。志ら乃師匠は1ヶ月をふり返ってこう語っていました。

「福島くんはアニメの声優だから、“絵があるとセリフが出てくるマシーン”のはず。だから“絵を見せること”に力を入れて指導したんです。とにかく“ここに池があって、横からのカットで~”と情景を説明しました。そうしたら福島くんも、スッと悩みが解決したように顔色が変わりましたよ。」

福島さんは「反対俥」の暴走する人力車に乗って上下に揺られる動きや、人力車にぶつかって池に落ちてしまった芸者さんを引き上げるシーンなどを、見事に全身を使って表現していました。

声優さんがこんなに激しく動きながら喋るところはなかなか見られない。落語はすごい。15分間、ただずっとその人を見ていていいなんて、こんな贅沢があるのか!と思える時間でした。

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やり切った瞬間に緊張の糸が切れて、走り切ったアスリートのように高座に崩れる福島潤さんの姿はとてもかっこよかったです。

◆まるで「昭和元禄落語心中」の与太郎!?

そして、アニメ「昭和元禄落語心中」の劇中で語られる落語を中心に、プロの落語家が実際に口演する人気コーナーへ。。これまで、入船亭扇辰師匠「鰍沢」、立川志ら乃師匠「時そば」、春風亭一之輔師匠「居残り左平次」、隅田川馬石師匠「野ざらし」が披露され、会場を沸かせてきました。

今回登場したのは、二ツ目の落語家・瀧川鯉斗さん。鯉斗さんは、落語家の“渋い”イメージを覆す明るい茶髪のフレッシュな風貌で、立川志ら乃師匠も「なんだあの日焼けの落語家は!」「華と色気のカタマリ」と驚くほど。

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さらに、サンキュータツオさんは鯉斗さんの大ファンだといい、「鯉斗さんは、名古屋の元暴走族の総長だったのよ」と衝撃の事実を発表!客席もみんな驚いていた。

鯉斗さんは18歳で暴走族を引退し、皿洗いのバイトをしていたところ店に興行に来た瀧川鯉昇師匠と出会い、弟子入りしたのだという。アニメ「昭和元禄落語心中」は、チンピラの主人公・与太郎が、刑務所の慰問に来た有楽亭八雲に感銘を受け、出所と同時に弟子入りするという話ということもあり、鯉斗さんはまるで「昭和元禄落語心中」の与太郎!?と思えるシーンでした。

他にも、「暴走族には“引退暴走”というものがある」という話や、「今は寄席の前にサーフィンをしている」という話など、鯉斗さんならではのエピソードがたくさんありました。

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この日、瀧川鯉斗さんが披露した演目は「紺屋高尾」という、若い染物職人・久蔵が、高嶺の花のナンバーワン花魁・高尾太夫に一目惚れするお噺。

この噺が大好きだという吉田尚記アナが、「紺屋高尾は、ベテランよりも若い落語家がやった方がいいものになる」と語っていたように、若い久蔵の一途さと無鉄砲さが心を打つ演目です。

鯉斗さんの落語に対する真摯さが、久蔵の高尾太夫に対する一途さと重なり、口演中にお金の勘定を間違えてしまうフレッシュさ(これは吉田アナにもツッコまれていました)が、久蔵の「3年給料を貯めれば高尾太夫に会える」と信じる無鉄砲さと重なって、だんだん鯉斗さんが久蔵に見えてくるんです。

もし立川志ら乃師匠が同じ演目をやったら、それはそれでまったく違うものになるのでしょう。これが吉田アナのいう「『紺屋高尾』は若い落語家がやった方がいい」ということの意味なんだと思いました。

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40分を越える瀧川鯉斗さんの『紺屋高尾』を、福島さんと吉田アナも熱心に見つめていました。

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立川志ら乃師匠がおっしゃっていた「落語は“人”だ」という言葉が強く胸に残りました。

声優・福島潤さんの「アニメが見えてきそうな描写」や、サンキュータツオさんと吉田尚記アナの「長年の落語愛を感じさせるトーク」にもいえることですが、落語というものは、その人の人生や、それまでやってきたことの全てが、その人の体と一緒に高座にあがるのだと思います。

次回「声優落語天狗連 Supported by 昭和元禄落語心中 第六回」は9月を予定しているとのことなので、楽しみです。

【 取材・文:yoppy 編集部 大塚早貴 】