年間約500冊の漫画を購入する生活を20年以上続ける“マンガマニア”で、“マンガ大賞”の発起人でもあるニッポン放送アナウンサー吉田尚記が毎週1冊オススメの漫画を紹介する「講談社presents 吉田尚記のコミパラ!」
第16回目にご紹介したのは、月刊少年マガジンにて、好評連載中の青春フットボール漫画「さよなら私のクラマー」(著:新川直司)。
“マンガ大賞”のノミネート作品の発表が近づいていることもあり、ややいつもよりテンション高く吉田アナウンサーは語り始めた。
吉田:そういえば、野球選手がいて、色んな魅力がある訳じゃないですか?
里崎さんだったら打撃もそうかもしれないけど、リードとか、それこそ守備が凄く良いとか、
タイプが色々あるかもしれないですけど、漫画家さんがもしいたら、一番評価されるのって
やっぱり絵が上手いってことじゃないかと思うんですよ。
里崎:確かに。
吉田:野球選手だって、やっぱり三冠王はどうしたって尊敬されますよね。
里崎:絵だけで読もうかどうかなっていうのの一つの目安になったりするときもありますよね。
吉田:……で、そのときに、じゃあ、今、現役最強の選手は…っていたら、
大谷が一番良いボールを放るんじゃないかとか、色々あるじゃないですか?
今、現役の漫画家さんの中で一番、絵が上手いのではないかと言われている方の作品を
今日は紹介したいという風に思っておりまして。今日はですね、月刊少年マガジンに
連載中の新川直司さんの『さよなら私のクラマー』という漫画を紹介したいのですが。
『さよなら私のクラマー』という作品の前に、まずは作者である新川直司先生の紹介を始めた吉田アナウンサー。新川先生の漫画の魅力の一つは、“画力”にあるようで――。
吉田:まず、この新川直司という方がどういう方かというと、最近まで「四月は君の嘘」っていう
漫画がありまして、これは元々、ピアノを弾く少年少女の物語だったんですけど、
それが連載されて、大ヒット作になって、アニメにもなったし、映画にもなったし
っていう作品なんですけど、この漫画を読んで、ある人がめっちゃ褒めてたんですよ。
誰かというと『ワンピース』の尾田栄一郎さんいるじゃないですか?
尾田栄一郎さんが今、一番羨ましいと思う画力を持っている人は…っていったら、
これが新川さんだったんですよ!
里崎:おおーっ!!
吉田:いや、本当にね、この絵の力っていうのが半端ないんですよ!本当、世界の名画みたいなの
あるじゃないですか。それこそ今だと、『君の名は。』っていうのは絵が綺麗だっていって
ヒットしてるじゃないですか? 本当に一コマ一コマがどうして連載でこれが
描けるんだってレベルの絵を描き続けていて、この漫画、先に言うと“女子サッカー”の
漫画です。“女子サッカー”の漫画でもちろん試合シーンも凄いんですが、
これ、見て下さい!(単行本を見ながら)普通に部活帰りの少女たちのコマですよ!
この美しさ!
里崎:すげー!
吉田:凄い!!
里崎:ちょっとクオリティ高いっすね!
吉田:普通の日常なんですよ。普通の日常なんだけど、もう女の子一人一人の表情の可愛さと
後ろの描き込みと一人一人のこう、なんすかね。衣装やら何やらの描き込みを綺麗に
写し取ると普通のシーンがこの美しさになるのか…!という――
里崎:あと、カット割りとあと背景と女の子のバランスが絶妙に良いっすね!
吉田:いや、そうなんですよ!キャラクター、一人一人もみんな凄く可愛い描かれ方をしてる
一方で今度、もう一つ、僕が気になったのは、試合シーンです。
漫画の凄いところは、止め絵として美しいだけじゃなくて動きが止まっている絵なのに
何枚か連続で見ると分かるじゃないですか? はい、これサッカーシーンで相手を
抜いていって、そのあと、ボールがパスで来るシーンです。一番初め、これまず、
ダンダンダンダン、いくつか――
里崎:足音だけの――
吉田:そうです。シーンなんですけど、これを足の上下で描いている。走っているだけで、
物凄いステップで相手が抜かれているってことがもう分かるんですよ!この瞬間に。
で、抜いた後にそこからパスが来ます!このパスが来る瞬間のこの3コマ!
縦の3コマ!周りの人間が止まっているのに、そのボールとキッカーだけだ動いている
絵が3枚来た瞬間にもう、こっちにパスが直接飛んでくるかのようなこの絵!
里崎:確かに!
言葉で説明されても、活字で説明されても、新川先生の画力の凄さの全ては伝わらないだろう。これに関しては、是非とも、漫画を実際に読んで体験して頂きたい。さらに、吉田アナウンサーは、『さよなら私のクラマー』の魅力を語り続けた。
吉田:……で、もう一つ!ほとんど写真みたいな絵を新川さんは描けるんですけど、
描けるんだけど、一方で漫画だからこその……、あぁ、このシュートシーンも見て欲しいな。
わざわざ見開きを使って、ボール1個丸ごと使うと物凄い迫力でボールが来たのが
伝わるやつとあとこの一方で背景、全くなしで漫画っぽいキャラクターがドーンと
意味のある重い言葉を言うシーンとかをもう、縦横無尽に駆使して出てくるんですよ。
単行本の中で。で、この瞬間にこの先生、顧問の、やる気がないとされている、けど、
何か色々と考えていそうな先生が出てくるんですけど、この先生が真っ白な背景の中で
テンション低そうに“女子サッカーに未来はあるのか?”と問い掛けてくるこのテーマ性の
作品な訳ですよ。
里崎:これ、ちょっと深い言葉を投げかけましたね。
吉田:そうなんですよ。また、この先生が俺によく似てるんですよね(笑)
里崎:確かに。似てる(笑)
今のところやる気のないように見える女子サッカー部の深津監督がどれだけ吉田アナウンサーに似ているかは、これまた実際に漫画を読んで確かめて頂きたい。(本当に結構、似ている。)
『さよなら私のクラマー』という漫画について、妙に気になるタイトルに惹かれるという方も多いと思う。吉田アナウンサーもどうやらその一人のようで――。
吉田:目の下にクマのあるひょろっとした先生が出てくるんですけど。
でも、これね。この漫画のもう一つ凄いところというか、新川直司さんという作家さんの
凄いところは、その『四月は君の嘘』っていう漫画がヒットになったときに、
ピアノの出てくる少年の物語で最終的に好きになったヒロインに、ん~、あんまり最後まで
言ってしまうのもどうかと思うんで、これからご覧になる方もいると思うんで、
まぁ、色々と大変なことが起きる作品を、ピアノの物語に『四月は君の嘘』っていう
タイトルを付けられて、あれ、もし、『ピアノ物語』っていうタイトルだったら、
そんなにヒットしなかったと思うんですよ。これを今回も女子サッカーの漫画で
もちろん色々、(タイトルの)付け方はあったと思うんですよ。
『サッカー女子、頑張る』みたいな。『さよなら私のクラマー』っていうタイトルなんですよ。
里崎:クラマーって何なんですかね?
吉田:格好良いでしょ? 全然、分からなかったんで、調べてみました!調べたら多分、
デットマール・クラマーという人のことらしいです。
里崎:ほぉ。名前なんすね!
吉田:サッカーの世界で日本のサッカーを世界レベルに引き上げた。何かメキシコオリンピックで
3位になってるんですよね。日本のサッカーって。あのときの大騒ぎの前に、こう
日本サッカーを世界標準に引き上げるために来たコーチの名前が
デットマール・クラマーなんですって。で、今は、この女子サッカーの選手たちが
本当に美しく青春を追いかけて、色々と不利なことも鑑みながらも強豪行くと思った選手が
そんな強豪行かないけれども、そこで色んな選手を見つけて頑張っていくみたいな王道の
ストーリーであるんだけど、どうも何か指導者側とかが色んなことを考えているって
いうことが最後、このタイトルには含まれていそうだぞっていう――
里崎:深いっすね!
吉田:それをあの絵で今、連載でこのタイミングで読めるっていうのが今だけなので――
里崎:月刊っすね!
吉田:月刊少年マガジンです、今!載っておりますので、『さよなら私のクラマー』は、
ちょっとオススメかなと……。しかも、その『四月は君の嘘』っていうのは
大ヒット作だったんですけども、『四月は君の嘘』の連載の前に別の作品を連載してて
これが女子サッカーの物語だったんですよ。で、一つヒット作を得た作家さんが今、
何が出来るようになるかというと、自分の一番書きたいものを書けるようになるんですよ。
里崎:ほぉ!
吉田:なので、どうもこの天才・新川直司が描きたかったのは、女子サッカーらしいぞ!という。
里崎:ということは、来るね、これ!
吉田:今、そう! 今、進行中なんで!
大ヒット作『四月は君の嘘』の新川直司先生の最新作。
青春フットボール「さよなら私のクラマー」。
ストーリーの面白さと迫力のある美麗な画力がマッチした作品となっている。
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吉田尚記のコミパラ! | ニッポン放送 | 2017年1月20日(金)
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